5月
ごがつ


5月1日(月) 山火事

4月29日午後、原発事故の帰宅困難区域(浪江町)の森林で火災が起き、強風により山林の7万平方メートル以上が延焼し燃えていることを、今日、知った。

火災は今もなお続いていて、30日の消火活動は日没とともに打ち切られ、5月1日午前5時過ぎから、再び、ヘリコプターで消火が行われたとのこと。

国が行った“除染”の実態は、福島に住む人たちの話しなどから聞いてはいるが、ともあれ、森林は除染ができていない。帰宅困難になるほど放射能汚染の激しい地域で山火事が起きれば、高濃度の放射性物質を取り込んだ木々が燃え、高濃度の放射性物質が飛散することは、誰の目にも明らかだ。

私のなかで、3.11は全然終わっていない。




5月3日(水・祝) お祭り

私が住む町では、毎年、GWのときに大きなお祭りがある。5日がクライマックスで、お神輿がたくさん出て、それはもうたいへんな人でにぎやかになる。各お神輿は大きな太鼓に先導されて、神社の奥からお旅所と呼ばれるところまで練り歩く。

この大太鼓が空気を震わせる音は、私が幼い頃から慣れ親しんだ音だ。そういう意味では、自分の音の原点のようなものとも言えるだろう。

今年は、私が演劇の音楽を担当していた頃の旧い友人と2人で、神社の境内を散歩し、焼きそばを食べて、ビールを飲んだ。





5月5日(金・祝) 旧友と

パソコン通信時代からの旧友と、お祭りでにぎわう街中で語り合う。久しぶりにいろいろ話をし、大切なひとときを過ごす。

さて、しかし、福島・浪江町で起きた山火事は、どうやら今もまだ鎮火されていないらしい。こんなにも晴れている青空を見上げながら、東京の西の方に住む私は、深呼吸をしてもいいの?と思っている。小さな庭の草むしりをするのがこわい。青空が絶望の色を帯びて来る5月5日。

北朝鮮、韓国、アメリカ、のことが連日報道されている。北朝鮮が行っているという地下核実験の大地の下。演習の名のもとにミサイルが落とされている海。その結果はどうなっちゃうの?人間がこんなことをしていて、自然が怒らないわけがない。

この国の総理は、5月3日に、憲法改正を2020年に施行したいと明言した。共謀罪の件もしかり。未来をになう子どもたちのために、高校の授業料無料化のこととは別に、大人はしっかり考えなければいけない。

ときどきラジオを聴く。午前中、NHKFMから流れてきた、NakamuraEmiさんの歌に釘付けになった。自分の言葉で語り、歌っている。私にとっては、友部正人さん、七尾旅人さん、このお二人に継ぐ衝撃だった。

自分の言葉で語り、歌うことができなくなるような社会、世界であってはならない。




5月9日(火) 未だ山火事は

福島・浪江町の山火事はまだ鎮圧されていないとの情報。

今日の午前中、テレビ朝日の番組で、関東以北のあちこらこちらで起きている山火事についてまとめて報道していたが、この浪江町のことには一切触れられなかった。

「県によると、焼失面積は50ヘクタール以上とみられる。ヘリコプターでの散水と合わせて、陸上自衛隊や地元消防約300人が現場に入って活動している。しかし帰還困難区域は除染が手付かずで、長期間人が立ち入っていないため、通常の山林火災とは異なる対応を強いられている。

隊員らは通常の作業服の下に白い防護服を着て、ゴーグルやマスクを装着。現場は水の便が悪く、水の入った袋やタンクを背負い整備されていない山道を進む」

以上、産経新聞より。

ここで消火活動をしている自衛隊の人たちのことを想う。

この国の隠蔽体質がほとほとイヤになってきた。




5月10日(水) 翠川さんの誕生日を祝う

大泉学園・inFのライヴにて、翠川敬基(vc)さんの68歳の誕生日をお祝いする。

当初はたくさんの美女に囲まれて誕生日ライヴを迎えるということになっていたらしいが、結局、今宵は私のみとなった。私だけ、でいいのかしら?(笑)と思いながら、演奏する。

今夜は、冨樫雅彦(per)さんが作曲したものだけを演奏。翠川さんと二人だけで演奏して、何か、冨樫さんが作った曲の核のようなものに触れたような気がした。というか、翠川さんとはもう何度も冨樫さんの曲を演奏してきているにもかかわらず、不思議なことに、なぜか今宵は、冨樫さんが創った空気やサウンド、風が、手に取るように感じられた。

やはり、冨樫さんの作品だけを集めたCDを作りたい。




5月13日(土) 別れは突然に

午後、母の主治医と面談する。誤嚥性肺炎の話しを詳しく伺う。その最期が、突然、訪れることがあることを知る。




5月15日(月) 打ち合わせ

午前中、もしかしたら引き受けるかもしれない映画の音楽の初打ち合わせ。共に音楽を創る方から、ディープな話しをいろいろ伺う。

午後、地元の信用金庫へ年金の相談に行く。ほとんどのミュージシャンは年金なんか納めていないが、私はいろいろあって、とりあえず納めている。普通は65歳から支給されるらしいが、この国の年金制度は破たん寸前なので、私は60歳になったら受け取ってしまおうかとも思う。

とはいっても、仮に60歳で受け取り始めたとしても、その国民年金の額は、かなしいくらい、ほんとうに微々たるものだ。私なんぞは、税金を納めたら、ほぼ消えていく額にしかならない。




5月16日(火) シェフレ

下北沢・小劇場で行われている『シェフレ 女主人たち』を観に行く。新井純さん、石井くに子さん、コトウロレナさんという、3人の女優だけが舞台にいる会話劇。あっぱれ!




5月17日(水) スェーデン料理とお好み焼き

なぜか、スェーデン料理とお好み焼きが食べられる地元のお店に、友人と打ち合わせも兼ねて行ってみた。

なかなか美味。

ただ、店内の空気が悪いことや、テーブルに対して椅子が高過ぎてちと疲れたのが、私としてはやや難点。

どうやら、このお店は、親子でやっているらしく、お父さんお母さんはお好み焼きを、息子夫婦はスェーデン料理を担当しているらしい。お母さんが嫁が作るポテトサラダについて、私たちにちょこっと愚痴って厨房に戻っていくのが、なんだか微笑ましい。そんな感じで共存しているのだろう。




5月18日(木) わがまち支え合い

私が住む市の「わがまち支え合い協議会」というものに、初めて出席してみた。

が、もう既に仲間同士、サークルのようなものができあがっていて、新参者はとても入りにくいものだった。この開かれなさに失望し、非常に疎外感を抱きながら帰宅した。




5月19日(金) 映画『ちかくてとおい』

3.11。津波で大きな被害に遭った岩手県大槌町。その風景を撮り続けている大久保愉伊さん監督のドキュメンタリー映画『とおくてちかい』を観に行った。

この音楽を担当しているのは、大槌に住んでいた、監督の父である大久保正人さんで、尺八やギターを演奏される方だ。

あのとき、毎日、テレビで放映される映像を観ていた私だが、大槌町の様子が報道されたのは3日~4日後のことだったと思う。初めて大槌町の様子が映し出されたとき、言葉を失いながらも、かつて何度もツアーでいっしょに訪れた坂田明(as)さんにすぐに電話をしたことを思い出す。

その約三ヶ月後くらいに、坂田さんと水谷浩章(b)さんと、仙台、一ノ関、盛岡で演奏したのだけれど、それはほんとうに重いツアーだった。釜石からほぼ海岸線沿いに北上し、大槌町に入った。町役場の時計の途中まで波が来たことが見える場所、その近くにあったジャズ喫茶・クイーンの跡地に立ち、坂田さんは「浜辺のうた」を演奏された。

そして、「俺は死ぬまでコンサートをやり続ける」とおっしゃっていた方は、波にのまれ、行方不明のままだ。

故郷を失ったクイーンのマスターは花巻の郊外に移住し、友人は東京で避難生活を続けている。

私のなかで、3.11が風化することは生涯ない。


映画:とおくてちかいのwebはこちら




5月20日(土) アントネッロ

ときどき、無性に聴きたくなる音楽や音がある。

古楽のアンサンブルであるアントネッロは、近年、アントネッロの3人だけでコンサートを行う機会が少ない気がしているのだけれど、今日は久しぶりに3人で演奏するというので、玉川学園まででかけた。

やはり、3人のアンサンブルはすばらしい。どうしたら西山まりえさん(ゴシックハープ)のような演奏ができるだろう?と思いながら、この春は健康を損ねていたと聞いた濱田芳通さん(リコーダー、コルネット)の、ともあれ元気なお姿を拝見して安堵する。




5月21日(日) JASRAC問題

最近、音楽教室云々の件で、YAMAHAはJASRACを提訴した。なんだかもう、なんだこりゃ?というのが正直な感想。

JASRAC、いったいどうしちゃったの?

「共謀罪」のことも含めて、表現することが、どんどん制約を受けていく世の中になっていっているように思われ、私はイヤだ、と思う。

さらに、昨年ノーベル文学賞を受賞した歌手・ボブディランの歌詞(風に吹かれて)の一節を、京都大の山極寿一総長が4月の入学式の式辞に取りあげ、それをwebに掲載したことについて、JASRACが使用料を京大に請求していたというニュースを読んだ。

参考
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20170519-00071103/

昭和のレコード会社が牽引してきた、旧態依然たる体制のままでは、これだけCDが売れない時代にあって、ネットを検索しまくっているJASRACにも、遠からず限界が訪れるように思う。

私は自身が主宰するコンサートなどにおいては、JASRACとはいわゆる“包括契約”を結んでいるが、それはもう仕方なくそうしているところが大きい。小さなライヴハウスなども、おそらく、何か問題にならないように、面倒なことに巻き込まれないために、そうしているところも多いと思う。この“包括契約”が諸悪の根源だと言っている人もいるわけだが。

ともあれ、なんとかならないのか、JASRAC。




5月24日(水) 共謀罪

「共謀罪」の趣旨を含む組織的犯罪処罰法の改正案が、5月23日午後、衆院本会議で採決され、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。

もう、ほんとに、アベシもスガシの顔も見たくなくなってきた。

また、21日(日)の深夜、『NNNドキュメント』(4ch)で、「戦争のはじまり 重慶爆撃は何を招いたか」を観た。一般的に、太平洋戦争勃発のきっかけとして、日本の真珠湾攻撃のことが広く知られているが、それよりも前、日本軍は中国を攻め続け、重慶では空爆による無差別殺人を実行していた云々、といったことを、恥ずかしながら、私は知らなかった。

ともあれ、少しずつ、少しずつ、この国が戦争への歩みをはやめていることに、私は怒りとかなしみを持って、息をしている感じだ。残された時間に、自分は何をすべきかと問いながら。




5月26日(金) ふなっしー

私のふなっしー好きはまだ終わっていない。

息抜きに、こんな写真を見ながら、ああ、欲しいなあ、なんて思っている(苦笑)。







5月28日(日) ディズニーシー

友人に誘われて、多分35年ぶりくらいにディズニーランドに行った。無論、シーは初めてだ。

日曜日ということもあってか、想像以上の人混みに、すっかりくたびれた。早起きして夕方まで滞在して、アトラクションというものにかかわったのは、たった3つだった。世の中のお父さん、お母さんは、ほんとうにたいへんだと思う。




5月29日(月) マイナンバー

個人情報保護法が施行されたのは2005年4月。それに真っ向から反対していた作家・故城山三郎さんの姿は今でもときどき思い出す。

ちなみに、その娘さんは大学の後輩なのだが、彼女はお父様の意思を受け継いで、憲法改正反対運動をしていると聞いている。

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以下、新聞記事から抜粋した文章。

それから12年経って、個人情報に関わる状況は大きく変わった。スマホが普及し、通信環境が整ったことで、便利なウェブサービスやアプリが増えた。データが多く集まり、サービス間でデータを利活用できれば、さらにユーザーにとって価値あるサービスを提供できるだろう。しかし一方で、ユーザーにとっては個人情報の漏洩や事業者が適切に個人情報を管理しているのか不安もある。

そうした課題を解決するため、2015年に「 個人情報の保護に関する法律」の改正法が成立し、2017年5月30日より全面施行となる。

今回の法改正により、取り扱う個人情報が5000件以下の小規模取扱事業者でも規制の適用対象となる。つまり、ユーザーの個人情報を扱うスタートアップは、どこも個人情報保護法に準拠する必要があるということだ。会社の規模が小さいから個人情報保護対策はまだやらなくても大丈夫、ということはなくなるので、注意が必要だ。

個人情報保護法の改正点は、個人情報の利用目的の明確化や第三者への個人情報を提供する際に記録を取るなどの透明化を義務付け、データベース提供罪の新設などいくつかある。

参考
http://jp.techcrunch.com/2017/05/29/personal-information/

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この「ビッグデータ」。

真夜中のテレビ番組だが、アメリカのドラマ『Low & Order』が非常に興味深くて、私はけっこう見ている。冒頭は必ず殺人事件から始まるが、社会問題や人種差別など、現代アメリカが抱えている病巣のようなものを知ることができる。

その捜査の際に大活躍するのが、警察官たちがPCの前で得ることができる、個人情報だ。個人IDによる情報、クレジットカード使用履歴などから、警察官たちは犯人の手がかりとなるものを簡単に入手している。無論、彼らは銀行口座も、その預金残高も、病歴も知ることができている。なんだかこわいなあと思う。

ここに、私は日本におけるマイナンバー制度の行く末を見る。証券会社からは何度もマイナンバーを教えろと連絡が届くが、未だに私は届け出をしていない。




5月30日(火) 隠蔽

テレビに多数出演する著名ジャーナリスト・山口敬之氏にレイプされたと主張する女性・詩織さん(28)が、5月29日、山口氏が不起訴となったことを受け、検察審査会に不服申立をしたと発表した。そして、詩織さんは弁護士を伴い、東京・霞が関の司法クラブで記者会見した。

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以下は新聞記事からの抜粋。

配布された資料などによると、詩織さんは2015年3月、当時TBSワシントン支局長だった山口氏に就職相談をしたところ、食事に誘われた。

そして4月3日午後8時ごろ、都内の串焼き屋に入り、午後9時20分ごろ寿司屋に移ったが、そこで食事をしているところで記憶を失った。そして、痛みで目覚めた際、レイプされていることに気付いたという。

時折涙ぐみながら、詩織さんは語った。

「私の意識が戻ったのは翌朝の午前5時ごろ。ホテルのベッドの上でした。私は裸にされており、山口氏が仰向けの私の上に跨っている状態でした。詳細については差し控えますが、はっきり言えることは、私はその時、私の意思とは無関係に、そして私の意思に反して性行為を行われていたということです」

詩織さんは酒に強く、酔って前後不覚になったことはなかったという。詩織さんはすぐに病院に行き、さらには4月9日に警視庁原宿署に相談した。

警察の捜査によって、タクシー運転手や、ホテルのベルボーイ、ホテルセキュリティーカメラ映像、下着から採取したDNA片の鑑定結果などの証拠が揃い、2015年6月にいったんは山口氏への逮捕状が発行された。しかし、捜査員からは逮捕直前、「上からの指示で、逮捕できなかった」と連絡があったという。

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私はこの女性に会ったことはないが、この方が嘘をついているとはとても感じられない。レイプされたことを顔を公けにして発表するということは、並大抵の覚悟ではできない。

同様に、先の加計学園問題について発言した前川文科前事務次官も、周辺の同僚の方々の発言を読んでも、およそ嘘をついているとは思えず。それまでと、そしてこれからの自分の人生を賭けて発表された強い思いを感じる。

森友学園の籠池氏にしても、まあ、日本会議だし、裏はいろいろ胡散臭いことがあることは素人にも感じられるし、あの幼稚園の教育が良いとはまったく思っていないが、偽証罪に問われるかもしれないことを背中に負って証人喚問に臨んだときの様子や姿勢、発言は、それなりに毅然としたものだったように感じた。安倍氏か籠池氏か、どちらがどれだけ嘘をついているのかはわからないが、籠池氏のほうが筋が通っているようにも感じられたのは、私だけではないだろうと思う。

昔、人を見かけで判断してはいけないと、よく言われた。でも、大人になってから、人は見かけだ、ということも学んだ。

上記の方々は、三人とも、「覚悟」を持って公表していると思う。その覚悟は己の人生を賭けていると思われ、そういう顔とたたずまいを感じる。

それに比して、この国の総理大臣、官房長官、さらに官僚も含めて、隠蔽工作、情報操作など、裏で手をまわしている人たちは、いったい、自分の人生を、この国の未来を背負う子どもたちに、どういう顔をして伝えることができるのだろう?と私は思ってしまう。

安倍さんさんは既に「アンダー・コントロール」と世界に向けて発言しているけれど、なんだかね、人間として、「恥を知れ」と叫びたくなる気分。「嘘をついちゃいけないよ」と、私は幼い頃、教わりました。





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