2021年のトピックス
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▼濱田芳通さんの連続演奏会『笛の楽園』評(7月17日 up)

濱田芳通リコーダー連続演奏会『笛の楽園』評が、7月15日、メルキュールデザールに掲載されました。

メルキュールデザール
大河内文恵さんによる文章です。

よろしければお読みになってみてください。

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人間ひとりの身体は、60兆(37兆という説もあり)の細胞からできているという。コンサートが始まった途端、すべての細胞が活性化しはじめたような感覚に襲われた。眠っていた細胞は叩き起こされ、ぼーっとしていた細胞もゆるゆる動いていた細胞も俄かになんだかわからないけれど踊りだす。

目の前の音楽と自分自身の反応と、二重の驚きが降ってきた。どこまで信じてよいのかわからないが、あるテレビ番組の「皮膚は0番目の脳」という特集で、皮膚には、耳でなくても“音”を聞く感覚が備わっているというのを見たことがある。まさに耳だけでなく、全身の皮膚で音楽を聴いている感じ。これはライブでしか味わえない感覚である。配信で聴くときには、空気の振動を皮膚で直接感じることはできない。

「笛の楽園」シリーズは、昨年企画されたもののコロナ禍で延期になり、今年の5月11日に第1弾、18日に第2弾、25日に第3弾と変更された。18日と25日は予定通りおこなわれたが、緊急事態宣言期間にかかってしまった11日のみ再延期となり、会場も豊洲シビックホールからムジカーザに変更して開催された。

リコーダーは、古楽器でありながら現代楽器でもあるという特殊性をもつ。日本の小学生が必ず音楽の時間にリコーダーを吹くというだけでなく、古楽器のなかでも現代曲が多いという意味でも古くて新しい楽器である。話が逸れるが、7月期のテレビドラマで大ヒットした「大豆田とわ子と三人の元夫」では、劇伴のなかにリコーダーを使った曲があり、このドラマの味わいに一役買っていたのも記憶に新しいところである。

話を戻そう。リコーダーの現代曲を演奏するのと、リコーダーの古典作品を現代的に演奏するのとでは、どこが違うのだろう?とコンサートのあいだずっと考えていた。古典作品をジャズ・アレンジで演奏することは、バッハやベートーヴェンなど誰もが知っている曲ではよくおこなわれることである。クラシック(とここでは敢えて言う。この言葉は本来あまり使いたくはないのだが)の愛好者とジャズ・ファン、両者に向けて間口が広がるメリットがある反面、「バッハへの冒涜だ」などと拒否反応がおきてしまう危険性も併せ持つ。

ファン・エイクならそうはならないか?おそらく「笛の楽園」をよく知る人ならば、音価の長い冒頭からmodo2、modo3と進んでいくにしたがって音価が短くより即興的になっていく構成をもつ曲から、即興性と容易に結びつくことに首肯するだろう。だが、その仕組みを知らずにリコーダーの演奏会だと思って来てしまった人は戸惑ったかもしれない。

ジャンルを跨ぐということは、裾野を広げる一方で、元のジャンルの反発を招く危険性と常に隣り合わせとなる。元ジャンルを超えるアレンジは一切罷りならぬという強硬派でもなければ、ある程度は許容されるとして、はて?ある程度とはどの程度だろうか。

濱田はフラッターのほか、窓を押さえて吹いたり、頭部管だけで吹いたりと特殊奏法を駆使しており、黒田もクラスターなど現代的な奏法も使っていたが、いわゆる前衛音楽で使われるような耳を覆いたくなるような音色は慎重に避けていたように思う。

その境界線が企画当初からの既定路線なのか、コンサート当日のあの場での結果論なのかはわからないが、上手く考えられた落としどころだと感じた。日程の都合上、第2弾と第3弾は聴くことができなかったのだが、このインプロビゼーションの回が、最終回となり、しかもムジカーザでおこなわれたことは、結果的に良かったのではないかと思う。

もちろん、場所に合わせてプランを練り直した可能性もあるのだが、ムジカーザがまるでブルーノート東京になったかのような錯覚をおぼえたのは筆者だけではあるまい。さすがに踊りだすわけにはいかないが、小刻みにノッて聞いている観客をちらほらみかけた。

近年若手のなかにも自分で企画を立てて演奏会をおこなう古楽器奏者が増えてきつつあるが、濱田がその先駆者のひとりであることは間違いない。黒田との邂逅でさらにパワーアップした濱田が次は何を仕掛けるのか。目が離せない。

(大河内文恵)


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この文章を書いてくださった大河内文恵さんという方を、私は存じ上げないのですが、正直、個人的には、うーん、ちょっと・・・と感じました(苦笑)。もっとはっきり書けばいいんじゃないかなあと思ったりもして。

私はもともと音楽をジャンルで考えたりしないので、境界線とか、越境とかは、どうでもいいと思っています。。また、私は自分の演奏において、何かを慎重に避けるようなことは、たとえば老人ホームで演奏するときは別として、通常のコンサートやライヴではまず考えたことはありません。それにしても、このデュオが一連の演奏会の最後で、しかもムジカーザで行われたことが良かったと、大河内さんはなぜ思われたのでしょう?

さらに、私なんかどうでもいいのですが、濱田さんの演奏者としてのすばらしいところ、すぐれているところ、古楽界においていかに先駆者であるか、というあたりを書いて欲しかったなあと思う私です(笑)。

ちなみに、濱田さんと演奏するとき、また濱田さんに限らず、私がもっとも大事に思っているのは、即興演奏、音色、ということです。

追記
すばらしいヴォイスパフォーマー、山崎阿弥さんの動画を。
音の在り様、空間認識、聞く、聞こえる、世界認識など、そして、音は、皮膚でも感じる、のであります(笑)。
https://www.youtube.com/watch?v=YV7HwUuXd2Q




▼濱田芳通さんの連続演奏会『笛の楽園』評(7月9日 up)

延期(昨年6月)の延期(今年5月)の延期で行われたコンサート、濱田芳通リコーダー連続演奏会『笛の楽園』評が、朝日新聞に掲載されました。白石美雪さんによる文章です。
どうぞお読みくださいませ。

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濱田芳通「笛の楽園」 時空駆け、楽しい変奏の遊び

これぞ、まさしく「笛の楽園」。各種リコーダーとコルネットを持ち替えながら、ピアノと繰り広げる対話は変幻自在だ。古今の音楽のスタイルを渉猟して、時空を駆け抜ける。濱田芳通によるリコーダー連続演奏会の最終日(6月30日、東京・ムジカーザ)。

「笛の楽園」とはルネサンスの作曲家ヤコブ・ファン・エイクのリコーダー曲集の名前である。全約150曲は民謡や流行歌、宗教歌といった異なる曲種を含み、雑多な音楽をまるごと包含して変奏を楽しませる。今回はそれらのメロディーを使いながら、曲集の理念を思い切り拡張した公演と言っていい。型破りな即興演奏を武器とするジャズの黒田京子との共演。

情景を呼び起こす趣向に心が躍る。前奏はまるで木漏れ日の美しい森。ピアノによるメシアン風の硬質な和音モチーフが鐘の音のように反復されるなか、リコーダーが小鳥やそよ風の気配を漂わせた。「戦争の詩編第68番」ではピアノが低音域で破壊的な音塊をたたきつけ、リコーダーも素朴な原曲を勇ましく変奏する。どの曲でも走句は愉悦に満ち、あっけらかんとしたジャズ風もあれば、3拍子の「サラバンダ」を5拍子で変奏する遊びも。

楽しかったのは「イギリスのナイチンゲール」の変奏の綱渡り。高音域のソプラニーノで鳥がさえずり、アルトリコーダーが陰りを生む。原曲の明朗な楽想はいつのまにか、カタルーニャ民謡の「鳥の歌」に。コルネットで吹くと、たちまち郷愁をそそる。

アカデミックな古楽とは対極の放埓(ほうらつ)さだが、歌心は半端じゃない。頭部管をあわててポケットから取り出すのもご愛敬。街の楽師さながらの親しみやすさで、聴衆の笑みを誘った。

(白石美雪・音楽評論家)

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なお、この一連の演奏会は抜粋された形で、後日YouTubeにアップされると聞いています。その時はぜひご覧になってください。




▼「浩三さん」動画アップのおしらせ(5月17日 up)

昭和20年、23歳の若さで戦死した竹内浩三。彼が遺した日記、手紙、詩などをもとに、女優・坪井美香さんが構成、書き下ろした脚本で、「浩三さん」の生涯を語っている動画のおしらせです。

浩三さんは今月生誕100歳を迎えたのですが、それに合わせて、このコロナ状況下での配信を坪井さんが企画しました。今回の動画アップは第1回となり、この後あと2回配信されて完成すると聞いています。

<動画:浩三さん その壱 蒼のころ>
https://vimeo.com/548073728

なお、2019年8月『語りと音楽で綴る「浩三さん」』(於 アレイホール・下北沢)で、私は音楽を担当し、坪井さんと2人で公演を行ったことがあります。演奏は生演奏。映像も赤羽卓美さんによる現場対応でした。今回の動画にもその公演の時の映像が少しだけ使われています。ぜひご覧ください。

「骨のうたう」
戦死やあわれ
兵隊の死ぬるや あわれ
遠い他国で ひょんと死ぬるや
だまって だれもいないところで
ふるさとの風や
こいびとの眼や
ひょんと消ゆるや

これは竹内浩三さんが遺した言葉です。
出征直前、浩三さんはチャイコフスキーの交響曲第六番『悲愴』をよく聴いていたそうで、上記の公演が行われた夏、私はこの曲と格闘したことを思い出します。




▼濱田芳通さんの動画がアップされました(4月7日 up)


昨年予定されていて、今年5月に延期になったコンサート『濱田芳通 “笛の楽園” ヤコブ・ファン・エイク作品集 リコーダー連続演奏会』で、5月11日(火)に演奏させていただく濱田さんのYouTube動画です。濱田さんとのデュオで私は演奏しています。ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=ib9753-5ltI


この動画を撮影したのは、今年3月2日、代々木上原ムジカーザにて。演奏曲は「カントリーロード」。なにゆえ、この曲?その答えは、濱田さんがジブリの映画『耳をすませば』の中でこの曲を演奏されているからだそうです。(すみません、私はこの映画を観ていません。)

収録当日はすばらしいスタッフに囲まれ、演奏させていただきました。濱田さんのスタッフ、映像スタッフのみなさん、そしてピアノのピッチを下げて調律してくださり、終演後に元のピッチに戻す作業までしてくださった調律師・辻さん。多くの方たちのお力で、この動画は創られています。

それにしても、ああ、なんと、自分の恥ずかしきことよ。反省満載(苦笑)。濱田さんはあっぱれ万歳!


また、『webぶらあぼ』に、5月のコンサートをめぐって、濱田さんのインタビューが掲載されています。こちらも併せてぜひお読みくださいませ。
https://ebravo.jp/archives/84647


5月のコンサートの詳細はこちらへ。
https://hamada.somniaremusica.com/
チケットは私のほうでも扱っています。よろしければご連絡くださいませ。少しだけいいことがあるかも。






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